研究概要 |
(1) HP1γ変異マウスの始原生殖細胞(PGC)の解析 PGCの発生と分化にはクロマチン修飾をはじめとするエピジェネティックな制御が重要である。HP1γはメチル化ヒストン(H3K9me)に結合するエピジェネティック制御因子の一つである。本研究では我々の作製したHP1γ変異マウスが雌雄ともに不妊であり,減数分裂期以前より生殖細胞の数が少ない原因を明らかにすることを目的とした。初期のPGCを特異的に標識するBlimpl-mVenusマウス(京大・斎藤先生より分与)を用いることにより,E7.5やE8.5の発生初期からPGC数の減少が認められた。単一細胞RT-PCRを用いた解析からHP1γ変異PGCの生殖細胞への分化は正常に起こっており,細胞死の亢進も認められなかった。また,生殖隆起への移動も正常であった。そこでPGCの増殖に着目し,細胞周期解析を行った。E11.5-12.5の増殖期のHP1γ変異PGCはほとんどがKi67陽性であり,増殖の休止は認められなかった。しかし,BrdUの取込みが有意に低下しており,S期のPGCが減少していた。フローサイトメトリーの解析からもHP1γ変異PGCはG1期に集積しており,S期への移行が抑制されていた。今年度は,細胞周期を制御する分子群の解析を進めて,HP1γがPGCの細胞周期を制御する分子メカニズムを明らかにしたいと考えている。 (2) ヒストン脱メチル化酵素の欠損マウスの作製 ヒストンのメチル化はエピジェネティックな制御の中心的な役割を果たしている。メチル化酵素の解析は世界的にかなり進んでいるが,脱メチル化酵素はまだ不明な点が多い。ヒストン脱メチル化酵素の一つの欠損マウスを作製してその解析を進めた。また,TNAPCreマウスと交配することにより,生殖細胞特異的に欠損したマウスを作製して,生殖細胞の発生分化におけるヒストン脱メチル化酵素の役割を解析している。
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