研究概要 |
生殖細胞のなかでも、オスの精子幹細胞は唯一in vitroで増殖することができるほど自己複製能が高く、非常に安定に精子形成を支えることが知られている。しかし、「種の保存」という重大な役割を担うために必須であるこの自己複製(増殖)がどのように制御されているのか、その機構は明らかとされていない。そこで本研究は、ポリコームタンパクによる精子幹細胞の自己複製(増殖)調節機構に注目し、その全容解明と生理的意義の追求を目的として行っている。本年度は、(1)ポリコームタンパクによるINK4遺伝子座(CDK阻害タンパクp16, p15及びp53活性化タンパクARFをコード)の転写抑制機構の解明として、ポリコームリクルートメントに関与する非コードRNAを探索し、その同定に成功した。我々が見出した非コードRNAは、INK4遺伝子座を抑制していること、またポリコームタンパクと結合し、INK4遺伝子座へのポリコームリクルートメントに関与する事を明らかとした。(2)さらに同定した非コードRNAが細胞増殖を制御していることを明らかとした。(3)ポリコームタンパクbmi1コンディショナルノックアウトマウスを作成するため、ターゲッティングベクターを作成した。今後、定法に従ってbmi1コンディショナルノックアウトマウスを作成して、ポリコームタンパクが精子幹細胞の自己複製及び精子形成に関与しているかを個体レベルで解析する予定である。
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