研究概要 |
ゼブラフィッシュ精子形成の発達段階のマーカーとしてPlzf, CyclinB3, Sycp3に対する抗体を作製し、それらを用いて精細胞への分化が認められない突然変異体its, isa, imoの3系統を解析した。その結果、3系統ともに精原細胞までは異常が認められず、itsは精母細胞の第一減数分裂前期の開始が異常となること、isaとimoはレプトテン期の発達が異常になることがわかった。つぎに、セルトリ細胞株をフィーダーとしてこれらの精巣細胞を培養したところ、これら3つの変異体の異常は生殖細胞そのものの異常であることが示唆された。原因遺伝子のマッピングを行った結果、its遺伝子は23番染色体、isa遺伝子は6番染色体、imo遺伝子は24番染色体に存在することが明らかとなった。さらに詳細なマッピングを進め、予想される領域内の遺伝子コード領域の塩基配列を決定したところ、isa変異体の1つの遺伝子にナンセンス変異が見つかった。これまでに調べた変異体52匹のすべてにこのナンセンス変異が認められている。現在、この変異体の正常遺伝子導入による救済実験とその遺伝子の機能解析を進めているところである。併行して、精原幹細胞の増殖や分化が異常となる変異体の解析を目的に、ゼブラフィッシュの精原幹細胞移植法の確立を進めた。解離した精巣細胞を再凝集させて皮下移植したところ、精巣組織が再構築され精子形成が進むことが認められた。そこで、標識した精原幹細胞を再集合塊に混ぜて移植したところ、標識精原幹細胞はセルトリ細胞に囲まれ、自己再生と分化が起こることが認められた。少数の精原幹細胞でも移植可能であり、今後の精原幹細胞解析に有効な移植法を確立できたものと考えている。
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