研究概要 |
始原生殖細胞は、潜在的多能性を獲得・維持しつつ、生殖細胞として特殊化した機能を獲得するために、生殖細胞特異的な遺伝的プログラムを確立する。代表者は、始原生殖細が、DNAメチル化及びH3K9me2をゲノム全体から消去することを報告してきた。しかしながら、このような始原生殖細胞特異的なエピゲノムリプログラミングがどのような生命機能を保証しているかについては全く分かっていなかった。 ES細胞で始原生殖細胞特異的なエピゲノムネットワークを再構築することで、エピゲノムネットワークの構造解析と、その下流に存在する生殖細胞特異的な遺伝的プログラムの同定を試みた。始原生殖細胞では、転写抑制因子であるBlimp1及びPrdm14の発現誘導に伴い、エピゲノム調節因子であるDnmt3a/b, Np95及びGLPの発現抑制が誘導され、ゲノム全体のDNA及びH3K9me2の脱メチル化が誘導される。そこで、始原生殖細胞で誘導されるDNA及びH3K9me2の脱メチル化が生殖細胞特異的な遺伝的プログラムの誘導に関与しているか否か検証するために、DNMTs及びGLP欠損ES細胞における遺伝子発現解析を行った。その結果、DNA脱メチル化単独、H3K9me2脱メチル化単独及びDNA及びH3K9me2脱メチル化両方の制御を受けている生殖細胞特異的な遺伝的プログラムの抽出に成功した。さらに、Blimp1及びPrdm14がDnmt3bの転写を直接的に抑制していたことから、始原生殖細胞特異的な転写制御因子が特異的なエピゲノムネットワークを確立することで、生殖細胞特異的遺伝的プログラムが誘導されるのではないかと考えている。
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