公募研究
本研究は14番染色体インプリンティング遺伝子群の制御機構をはじめとする配偶子形成過程でのゲノム刷り込みのメカニズムを明らかにし、不妊、流産、先天異常の原因の解明、生殖補助医療の向上に結びつけることを目標としている。昨年度、エピ変異の発症メカニズムの解明のために、エピ変異患者のゲノムDNAを用いてCGHアレイにて微小欠失の同定を試みたが明らかな欠失は同定されなかった。そこで平成22年度はこれらの患者、両親のサンプルを用いて14q32.2領域を網羅的に次世代シークエンサーで解析を行った。解析を行った2例の14番染色体父親性ダイソミー(upd(14)pat)表現型を示すエピ変異患者、1例の14番染色体母親性ダイソミー(upd(14)mat)表現型を示す患者に共通する塩基置換は認められていないが、父親性ダイソミー患者2例で共通する塩基置換を数十か所認めており、確認作業を進めている。さらに、upd(14)pat患者胎盤、母親由来のインプリンティングセンターを含む微小欠失症例の胎盤を用いて14番染色体インプリンティング領域に存在する父性発現遺伝子であるDLK1,RTL1抗体を用いた免疫染色、電顕による組織学的検討、定量PCR法による発現解析をおこない、RTL1が胎盤絨毛血管内皮に限局して発現しており、患者において、その発現が増強していることを確認した。さらに、RTL1が過剰発現しているupd(14)pat患者において胎盤の絨毛血管内皮細胞基底膜の腫脹を電顕にて同定した。RTL1が胎児・母体間の栄養、酸素の輸送に大きな役割を果たしている可能性が示唆される。RTL1の発現が消失しているupd(14)mat患者において、子宮内胎児発育遅延、胎盤低形成の報告を認めており、原因不明の胎盤低形成に対する候補遺伝子と考えられ、原因不明の低形成を認める胎盤にてRTL1の発現を現在検討している。
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PLoS Genetics
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http://www.nch.go.jp/endocrinology/upd14/index.html