公募研究
本研究は、ユーラシアの地域大国である中国、インド、ロシアの中産階級を対象に、その台頭がもたらす政治的・社会的インパクトを明らかにすることを目的としている。従来、中産階級研究を担ってきた政治学や社会学は、これらの国での研究に特化する傾向があり、リサーチ・クエスチョンも各地でバラバラだった。そこで本研究では、アジア・バロメーター2008などのデータベースを用い、共通の比較の枠組みを作りながら、そこで見られた知見を首尾よく解釈するための作業に専念した。具体的には、研究代表者の園田と研究協力者の林裕明(島根県立大学)が、それぞれみずからの関心から比較の枠組みを設け、データ分析をした結果を持ち寄り、検討を重ねた。その結果、(1)ロシアでは収入格差が人びとの不平等意識に強い影響を与えているのに、中国やインドでは必ずしもそうなっていない、(2)ロシアでは不平等意識が収入に集中する傾向があるのに対して、中国では教育や職業、インドでは教育や民族にも不平等意識が集まっている、(3)ロシアの中産階級は現在の政治体制を否定的に見る傾向が強いが、中国やインドでは肯定的な意識が前面に出ている、それぞれめ地域によって意識形態に違いが見られることなどが明らかになった。これらの違いをどのように解釈するかについて、中国とロシアの中産階級研究者と討論を重ねており、2009年12月に発表した原稿のブラッシュアップを行っている最終である。具体的には、李春玲(中国社会科学院)、劉欣(復旦大学)、陸暁文(上海社会科学院)、潘大渭(上海社会科学院)、L・コザルス(ロシア国立高等経済学院)、T・マレーヴァ(独立社会政策研究所)、V・ラダエフ(ロシア国立高等経済学院)などの研究者と意見交換を行った。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
アジア研究 第55巻2号
ページ: 10-22
中央公論 6月号
ページ: 46-53
Journal of Contemporary Eastern Asia Vol8, No2
ページ: 1-14