研究概要 |
カゴ状の結晶構造を持つクラスレート化合物・充填スクッテルダイト化合物のうち,これまで超音波によるラットリング(カゴに内包されたイオンの非調和振動)の検証が行われていない以下の物質について精微な超音波測定を行った。 U_3Pd_<20>Si_6…共同研究者芳賀・立岩(原研先端研) ウランを内包するカゴ状化合物のラットリング探索としては初めての例である。3つの超音波モードで弾性定数の温度変化を2Kから370Kの範囲で測定し、周波数依存性を検証した結果、U_3Pd_<20>Si_6はラットリングに伴う超音波分散を示さないことが解った。また本物質はT_N=19.5Kで反強磁性秩序を示すが、本研究ではT_N近傍で弾性定数C_<44>に30%の巨大なソフト化を示すことが明らかになった。その変化量が反強磁性に伴う磁歪としては大きいことと、結晶場解析により求められた電気四極子間相互作用が強的であることから、四極子モーメントが反強磁性秩序に伴って誘起されている可能性を指摘した。 SmOs_4Sb_<12>…共同研究者Maple・Baumbach(カリフォルニア大サンディエゴ校)、Ho(カリフォルニア州立大フレスノ校) カリフォルニア大と北海道大で並行して単結晶試料を育成し、超音波測定が可能な単結晶を得ることに成功した。弾性定数C_<11>の測定を行い16MHZと52MHzの測定周波数においてラットリングに伴う超音波分散を確認した。 LaRu_4As_<12>…共同研究者Henkie・Cichorek(ポーランド科学アカデミー) ポーランドから提供された純良単結晶試料の超音波測定を行い、ラットリングの検証を行なった。その結果160MHzの高周波で[111l]軸方向に伝搬する縦波と横波モードが超音波分散を示さないことを確認した。
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