研究計画の主題である、重希土類を含む充填スクッテルダイト化合物における多重極秩序の可能性を吟味するために、首都大佐藤教授のグループから単結晶のGdRu_4P_<12>の提供を受け、^<101>Ru核の核四重極共鳴実験(^<101>Ru-NQR)を行なった。用いた試料は残留抵抗比が以前^<101>Ru-NQR測定に用いた多結晶試料と比べて約5倍は大きくなっており、比熱測定で見られる転移に伴う異常も鋭く、バルク測定の観点からは非常に良質な資料であった。しかし、結果としては^<101>Ru-NQRのスペクトルは以前の多結晶での結果と比べて、広いものとなってしまった。この原因として、試料表面の劣化や、バルク測定には反映されきらない格子欠陥などが考えられるが、現在のところは明確な要因は判明していない。現状の結果については、日本物理学会第65年次大会において成果報告を行なったが、今後試料処理した直後の測定等を試みる予定である。 これとは別に、最近注目されている鉄を含んだ超伝導体において、d電子系ではかなり大きな電子比熱係数をもつKFe_2As_2においてマルチギャップかつラインノードをもつ超伝導の可能性を指摘した。電子比熱係数の値そのものは、~0.1J/K^2molあり、通常の意味での重い電子系とは有効電子質量の形成過程は恐らく異なるものの、非常に高品質の単結晶(残留抵抗比500以上)が育成されており、dHvAなどの量子振動現象も観測されている。試料提供を広く行ない、現在共同研究を展開中であり、超伝導対称性の決定を行なうことにより、大きな有効電子質量との相関を見極めたいと考えている。
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