|
近年、"量子臨界点近傍に形成される新しい量子相"としての異方的超伝導と非フェルミ液体に大きな関心が集まっている。強相関電子系において、典型例としてこれまでCc系の重い電子系が主に研究されてきたが、本研究では我々のグループにより発見された新物質のYb系の重い電子超伝導体β-YbAlB_4およびその類縁物質を対象とし、この系の示す量子臨界性と超伝導の研究を行う。
初年度はまず、常圧下の精密磁化測定から、この系が零磁場近傍で示す磁化の発散的挙動の詳細を調べ、磁化(の温度微分)がT/Bスケーリングを示すことを明らかにした。この結果から、この系の量子臨界性が、スピン揺らぎの理論で説明のできない非従来型であり、さらに、実験精度の範囲内で実質的に零磁場量子臨界点が実現していることが分かった。現在進行中の圧力下の電気伝導度、交流帯磁率測定と合わせて、量子臨界相の実現の可能性等を検証したい。
また、類縁物質のα-YbAlB_4について、その純良化に成功し、低温でSdH振動の観測にも成功した。この純良試料を用いて常圧下の低温物性測定を行った結果、零磁場での基底状態がβ-YbAlB_4と異なりフェルミ液体であること、さらに3T程度の磁場下でメタ磁性を示すこと等が明らかになった。さらにα-YbAlB_4のAlサイトにFeをドープした場合、磁気転移が出現する。このとき、わずか1%程度ドープした系では磁気転移が抑えられ、顕著な非フェルミ液体性を示すなど、ドーピングにより量子臨界点が実現することが分かってきた。今後、この量子臨界点の起源と、β-YbAlB_4における零磁場量子臨界点との関係について明らかにしたい。
|
