研究概要 |
本年度は極低温における磁化および熱膨脹測定装置の立ち上げと,立方晶の結晶構造をもつ希土類化合物の純良単結晶試料育成およびその低温物性評価を計画した。まず極低温磁化測定装置については,磁場勾配コイルの不具合が起きたため現在も開発途中である。熱膨張測定装置については,3Heソープ式冷凍機(Oxford Instrument社製),超伝薄マグネット(Oxford Instrument社製),自家製のキャパシタンス式熱膨張計を組み合わせたシステムを開発した。低温でのキャパシタンス熱膨張計の感度は△L/L~10^<-8>と目標としていた高感度な値を達成することができた。開発の際,バイポーラディアル超伝導マグネット電源1台とACレジスタンスブリッジ1台を新たに購入した。このバイポーラディアル超伝導マグネット電源1台で磁場コイルと磁場勾配コイルの両方の磁場を制御することが可能となった。 次に立方晶構造をもつ希土類化合物の純良単結晶試料の育成も行った。その結果,高周波誘導炉を用いてNdCu_4Ag, SmCu_4Ag, PrCu_4Ag, SmIn_3, SmSn_3の純良単結晶試料育成に成功した。NdCu_4Agは4.2Kで反強磁性転移を示す物質である。この物質の極低温熱膨張測定を0.3K以上で行ったところ,これまでの報告とは異なりかなり複雑な磁気相図をもつことが明らかとなった。またSmCu_4Agは5.5Kで反強磁性転移を示す化合物であると考えられているが,精密な熱膨張測定を行った結果,反強磁姓転移は2次転移ではなく1次転移的であることが分かった。これらについては今後より詳細な研究を行う予定である。
|