研究概要 |
(1)充填スクッテルダイト化合PrOs_4Sb_<12>の温高圧下Sb-NQR法による研究 充填スクッテルダイト化合物PrOs_4Sb_<12>の重い電子超伝導と四重極揺らぎとの関連を低温高圧下核磁気共鳴法によって調べるために、世界初となる5万気圧を超えるSb-NQR用対向アンビル型圧力セルの開発を行った。この圧力セルはこれまでの高圧下核磁気共鳴法の標準的加圧装置であるピストンシリンダー型(最大圧力3万気圧未満)に比べ、核磁気共鳴には十分な量の試料空間を備えるものである。平成22年度において、室温でおよそ6万気圧の加圧テストに成功した。今後未踏の5万気圧下NMR実験によって、本物質の電子状態解明のみならず、他の系における様々な新しい知見が得られると期待される。 (2)新奇Fe系圧力誘起超伝導体CaFe_2As_2の量子臨界現象と非従来型超伝導に関する研究 鉄系超伝導体は2008年に発見された全く新しい高温超伝導体であり、その超伝導状態や発現機構は不明である。本研究課題では世界に先駆けて単結晶CaFe_2As_2(P_c~5kbar,T_c~5K)を用いた系統的な低温高圧下As-NMR/NQR実験を行った。その結果、超伝導のクーパー対の対称性が、加圧によってギャップレス超伝導から、d波的な超伝導へと転移する(圧力依存性を示す)ことがわかった。このことは本物質の超伝導が、「量子臨界点」近傍で発現していることを示す。また、常伝導状態の電子状態の圧力依存性から、鉄のd電子による多バンド構造由来のスピン揺らぎが超伝導発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究成果は、鉄系超伝導が重い電子系超伝導と普遍的な性質を持つことを示すものであり、量子臨界点を通じた系統的な理解が今後期待される。
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