本研究では多極子自由度ラットリング自由度を持つ系におけるc-f混成効果に起因した新しいタイプの重い電子状態の解明を目的とし、熱的測定(比熱、熱電能、熱膨張)から研究項目(A)【多f電子系における混成効果による有効質量増大】と研究項目(B)【ラットリングによる有効質量増大と新奇現象を示す新物質探索】について研究を行っている.本年度の成果は以下の通りである. 1. 全自動キャパシタンスブリッジを導入し、^3Heクライオスタットを用いた高精度熱膨張測定の立ち上げを行った.現在、ノイズ対策を講じ、高精度測定が可能となるよう改善を進めている. 2. 結晶場一重項基底状態を持つPrOs_4P_<12>の熱電能S(T)は10Kに極大を示し、S/Tは20K以下で増大する.電子比熱係数の増大の機構として低エネルギーに位置する結晶場励起3重項を介したc-f混成効果の可能性を検討している.(研究項目(A)) 3. 充填スクッテルダイトの秩序型ケージ置換系RT_4X_6X'_6の新規合成を行う前段階として、先ず非充填物質の高圧合成を行っている.(研究項目(B)) 4. 歪みゲージ法によるLa化合物の熱膨張測定を行い、ゲストイオンモードのエネルギーに対応する温度以下で格子グリューナイゼン定数の増大を示唆する結果が得られた.(研究項目(B)) 5. 充填スクッテルダイトの格子比熱に関する系統的研究についての成果を論文発表した.関連する重要な成果として、ゲストイオンモードのエネルギーと構造パラメータとの相関について調べ、ケージを構成するXの共有結合半径r_Xを考慮したゲストフリー距離よりも、ゲストイオンの有効イオン半径を単純に差し引いたr_<R-X>-r_<R3+>が良い相関を示す結果が得られた.また、またもOs化合物はこの相関からやや外れる傾向がありc-f混成効果等によるゲストイオンとケージ間の相互作用の影響が示唆される.(研究項目(B))
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