研究概要 |
1, 試料育成環境整備と単結晶育成及びその評価について 本年度,研究代表者の研究室においてマッフル炉を用いたフラックス法による単結晶試料育成が可能となった。また,別予算にてイメージングプレートによるX線ラウエ写真撮影装置が導入され,短時間で単結晶の結晶性の評価が可能となった。手始めにYblnCu4の単結晶試料の育成をフラックス法にて行ったところ,ラウエ班点の綺麗な単結晶試料が確認できた。さらに,a軸方向の電気抵抗測定により,40K付近の構造相転移等の確認もなされた。現在,本研究の研究対象であるCeRhSi3等の単結晶試料の育成を試みている。 2, 重い電子系物質の物性測定 本年度,CeIrIn5の電気抵抗,熱電能測定を行った。両測定ともa軸方向の測定であり,1.5K~300Kの温度範囲で,圧力は2.4GPaまで行った。両測定により,近藤温度が圧力とともの増大することが分かった。なお,本年度はまだ希釈冷凍機の整備が終えておらず,次年度の課題である。 3, CeRhSi3, CeIrSi3の中性子散乱研究 本年度のCeRhSi3の中性子非弾性散乱研究では、低エネルギーの磁気散乱を観測した上で初めて温度変化を行った。それによると,非整合波数位置でエネルギーを0.7meVに固定した時に,5K~10Kの温度付近で散乱強度の極小を示し,より低温では強度が増大することが明らかになった。より低エネルギーである0.15meVでの同測定では,非干渉性弾性散乱のバックグラウンドが高いため明瞭な温度変化は観測されなかった。そこで,次年度は,上記の低エネルギーの磁気散乱がどのようなスペクトル関数で表され,どのような波数依存性を示すのかどうか,磁気励起の全体像を明らかにすることが求められる。なお,今後試料スペースの検討から試料体積を1.5倍から2倍に増やすことが可能であるため,より多くの単結晶試料を確保し,磁気励起のシグナルを高める工夫も求められる。 また,本年度までのCeIrSi3の中性子回折研究により、正方晶系結晶構造による主要な(HKO), (HOL), (HHL)の3つの散乱面において磁気反射の探索を試みたが,観測されなかった。そこで,どこの波数ベクトルがよいネスティングベクトルになっているのか現在バンド計算の専門家と議論している。
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