本年度は、空間反転対称性のない超伝導体としてCePt_3SiとLaPt_3Siを主な研究対象とした。また、新たに購入したSQUIDも利用して、3軸方向それぞれについて、磁場印加用コイルと磁束検出用コイルを備えた3軸磁化測定システムを製作した。このシステムでは、標準の超伝導試料の転移を用いて残留磁場を測定することが可能で、どの方向も50μG以下の零磁場に近い環境を得られるようになった。また、試料の3軸方向の磁化測定も行うことができるので、CePt_3Siについて時間反転対称性の破れた超伝導体で期待される自発磁化の検出を試みたが、バックグラウンドの変化による誤差の範囲内で自発磁化を示唆する結果は得られなかった。そこで、LaPt_3Si上で、時間反転対称性の破れたスピン三重項・一重項電子対混合状態の存在を示唆する結果を示したジョセフソン素子について、本システムの環境下で残留磁場による磁束トラップを極限まで減らして、磁場特性の再測定を行ったところ、残留磁場の減少によってむしろ時間反転(磁場反転)に対する非対称性が際立つような結果が得られた。一方で、d波超伝導状態が予想されているCeCoIn_5では時間反転対称性が保たれていることを支持する結果が得られたので、時間反転対称性の検証に有効な零磁場環境が得られたものと考えられる。一方、LaPt_3Siのジョセフソン効果の研究では、電流方向がa軸方向の場合にはフラウンフォーファー型の特性が得られていたが、磁場の方向をこれまで印加していたc軸方向ではなくa軸方向に変えて測定したところ、同一の試料でもランダムに振動する磁場特性に変わることがわかった。この結果は、空間反転対称性のない系特有の双晶構造により、時間反転対称性の破れた超伝導状態が現れるという理論と関連している可能性があり、今後さらに詳しく調べる予定である。
|