研究概要 |
スクッテルダイトを代表とするカゴ状化合物において現れる大振幅振動の詳細な描像と、その物性との関連について、中性子散乱により明らかにすることを目的として、研究を進めている。今年度は、原子炉の計画外停止により、測定は実施できなかったため、主として解析と、実験装置の整備を進めている。PrRu4Sb12の室温での構造解析から、Prの核密度分布について、幅は拡がっているが、分布の最大値はカゴの中心にあり、ガウス型の分布をとっていること、異方性も小さいことなど、分布の詳細な構造を明らかにした。また8Kの低温でもカゴの中心が安定位置で、変化がないことを明らかにした。低温での結果は、これまでに行ったPrOs_4Sb_<12>, NdOs_4Sb_<12>と一致している。 ラットリングイオン間の相関に由来する応答を効率的に探索するため、2次元位置敏感検出器を用いた測定環境の構築を行った。具体的には、分光器制御系と、2次元データ計測系の連携を確立した。またピエゾモーターにより構築されたゴニオメーターシステムを開発し、これを冷凍機内に設置することで、低ノイズ下での高効率測定環境開発を進めている。 原子炉再起動後の速やかな実験実施に向け、試料の準備を進めた。I型クラスレート化合物Ba_8Ga_<16>Sn_<30>、Ba_8Ga_<16>Si_<30>等や、β-パイロクロア化合物について試料の測定準備を終えた。次年度以降、順次測定を実施していく。
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