重い電子系の諸問題、特に多極子の秩序と多極子ダイナミクス及び超伝導電子対の対称性のミュオンスピン回転、緩和法による実験的解明を目的とした研究を行っている。微視的な内部磁場測定手法であるμSR法は磁気多極子の検出に大きな威力を発揮し、高い感度と独自の時間窓で磁気揺らぎの検出が可能であり、この特性を活かした研究を行った。 T_8基底状態を持っ立方晶のSmPb_3では5Kにおいて一次転移があり、磁気交換相互作用と四極子間相互作用の競合があるものと考えられる。μSR実験でも磁気転移が観測され、そこでは複数の内部磁場の存在が明らかになったことから長周期の整合秩序構造が提案される。また、SmIn_3は3段の逐次相転移があることが知られ、その転移の秩序変数が四極子である可能性がこれまで提唱されていたが、μSR実験では全秩序相において少なくとも内部磁場を伴う転移であることが確認され、全ての秩序相の主要な秩序変数は磁気多極子であり、スピン構造の逐次変化を持っことが示唆された。 YbPtSbは電子比熱係数が極めて大きい重い電子系物質であり、その磁気的状態はYb系の重い電子状態そのものを知る上でも興味深い。我々の行ったμSR実験では極めて弱い内部磁場の発生を伴う反強磁性への相転移が観測され、小さな磁気モーメントの秩序であることが示唆される。さらに磁気揺らぎによるスピン格子緩和が観測され、その緩和率は20K付近で最大値をとることを見出した。 他にCeOs_4Sb_<12>で低温秩序相の研究を行い、磁気秩序が起こっていることを確認するなど複数の物質での研究が進展した。
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