公募研究
本研究では、異種量子間を結ぶ共通の自由度スピンを介した、光子と電子の動的スピン量子相関の新原理を探求する。特に、研究代表者の有する「スピン状態転写」と「スピン状態トモグラフィー」の基礎技術を生かし、電子と光子が及ぼし合うスピントルクを実験的に検証し、電子と光子の間の交換相互作用について探究するのが目的である。本研究目的の達成に向け、初年度となる本年度、電子スピンが光スピンへ与えるスピントルク効果について調べた。GaAs量子井戸構造を用い、光子から電子への「スピン状態転写」の技術を用いて電子スピンを任意の重ね合わせ状態に生成し、これと相互作用する光スピン(反射光の偏光)への影響を、「スピン状態トモグラフィー」技術を用いて観測した。その結果、光子と電子に共通のスピン状態表現空間(ポアンカレーブロッホ球)において、任意に設定された電子スピンの状態ベクトル(ブロッホベクトル)を回転軸として、偏光の状態ベクトル(ストークスベクトル)が一定のトルクを受けたかのように回転することを実験的に検証した。特に今回、位相面内(ブロッホ球の赤道面)のうち、従来不可能であった磁場方向への電子スピン成分も検出することに初めて成功し、電子と光のスピン相互作用が完全に3次元的にコヒーレントであることを明らかにした。本結果は、光子と電子のスピン状態が、半導体中に仮想生成された電子対を介して量子相関することを示唆する。このように異種量子間の動的スピン量子相関を、全位相空間において明らかにした例は他にはなく、今後の動的相関電子系の解明とその活用に大きく貢献するものと期待される。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (26件) 図書 (1件)
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