研究概要 |
近年、フェムト秒レーザ照射による新しい励起状態の観測とそのダイナミクスの研究が、実験、理論、応用の観点を問わず注目されている。中でも、ペロブスカイト型遷移金属酸化物は、光照射による巨大かつ高速の反射率変化をともなう「光誘起金属化現象」を示すことで知られているが、その金属化のミクロな機構の定量的理解には至っていない。本研究では、系のスピンクロスオーバー転移にともなう絶縁体金属相転移を示すペロブスカイト型Co酸化物群を題材として、光励起後の光学応答変化とそのダイナミクスを徹底的に追究する。平成21年度は、3種の層状ペロブスカイト型Co系:RBaCo_2O_<6-δ>(R=Sm, Gd, Tbなどの3価の希土類元素)を用意し、800nmのフェムト秒パルスを照射後の可視光~中赤外領域における反射率変化を調べた。その結果希土類をR=Tb, Gd, Smと変えることで、光励起による反射率変化がだんだん大きくなることが明らかになった。希土類を変えることは、結晶格子のゆがみの大きさを変える、すなわち電子相関の大きさを制御することに相当する。これにより、電子相関が小さい物質ほど、光励起による電子状態変化を発生しやすいことが分かった。
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