ドナーが関与する発光過程としてドナー・アクセプターペア(DAペア)発光に注目し、ドナー電子が受ける量子閉じ込め効果が発光過程へ及ぼす影響について調べた。試料としてドナーとしてAl^<3+>イオン、アクセプターとしてAg^+イオンをドープしたコア/シェル型CdS/ZnSナノ粒子の作製を試み、DAペア発光が明確に観測される試料の作製に成功した。 作製した試料について、DAペア発光の発光エネルギーおよび発光ダイナミクスの粒子サイズ依存性を調べた。特に、粒子サイズがドナーに束縛された電子のボーア半径と同程度の場合について注目して実験を行った。発光エネルギーの粒子サイズ依存性においては、励起子エネルギーと同様の量子閉じ込め効果によるエネルギーシフトが観測された。この結果から、Al^<3+>ドナーに束縛された電子は自由電子と同様の量子閉じ込め効果を受けることが明らかになった。また、発光ダイナミクスの測定においては、発光ピークが時間と共に低エネルギー側にシフトする現象が見られ、さらに粒子サイズの減少に伴いこのピークシフトが抑制されるという結果が得られた。発光ピークの時間シフトはドナー・アクセプター間の距離の分布によって起こる。従って、粒子サイズの減少によるピークシフトの抑制は、ドナー・アクセプター間距離の上限が粒子サイズによって制限を受けることを示している。以上の結果は、粒子サイズがドナーのボーア半径程度まで小さくなった場合、浅い不純物準位に束縛された電子の波動関数は粒子全体に広がり、自由電子の波動関数との区別がつかなくなっていることを示唆するものである。
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