近年、計算機性能と核子多体系における数値計算手法の飛躍的発展により、現実的核力を用いた核子多体系における第一原理計算が実現可能になってきている。しかしながら、芯を仮定しない殻模型などに代表される第一原理手法による大規模数値計算は、現在のスーパーコンピュータをもってしても、その適用領域は炭素12くらいまでの軽い原子核に限られる。そこで、従来の芯を仮定する殻模型計算において、より重い原子核へと適用領域拡大へ多大な成功を収めたモンテカルロ殻模型を第一原理手法のひとつである芯を仮定しない殻模型へと応用する試みを当該研究課題として当該年度から着手した。第一原理計算を行うため、相互作用としては、原子核構造を理解する上で欠かせない3体力の効果を出来る限り2体力に取り込んでいると期待されるJISP16という現実的核力を用いた。当該年度では、軽い原子核(ヘリウム4、ヘリウム6、リチウム6、リチウム7、ベリリウム8、ホウ素10、炭素12)において、束縛エネルギー、平均自乗半径、一粒子軌道占有数、電気四重極モーメント、磁気双極子モーメントなどの物理量に対して小さい模型空間でベンチマーク計算を行った。小さい模型空間ではあるが、現在得られている数値計算結果は、軽い原子核においてモンテカルロ殻模型による第一原理計算の有効性を示している。今後の計画としては、より大きな模型空間において同様なベンチマークを行い、モンテカルロ殻模型による第一原理計算の信頼性及び有効性を検証する予定である。将来的には、この第一原理計算手法をさらに重い原子核へ適用し、現実的核力に基づいた原子核における多体構造の系統的理解の一助となることを期待している。
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