本年度は、素粒子反応の精密な計算に必要な高次補正計算に現れる3点ループ・ファインマン積分および4点ループ・ファインマン積分について、GRAPE-DRという専用計算機を導入して調査研究を進めると同時に、ファインマンループ積分について積分方法等の研究を進めた。 GRAPE-DRの1チップは、DP加算器、SP乗算器および72 bit ALUからなるProcessor Element 512個を搭載している。動作周波数は約381MHzで、単精度性能としては390GFlops、倍精度性能としては195GFLOPSを有する。GRAPE-DRでは連携研究者の中里の開発したGRAPE-DR用の専用の4倍精度ライブラリーおよびコンパイラを使用した。4倍精度の演算を実現するために、BaileyのDDアルゴリズムを採用して実装している。さらに、コンパイラではファインマンループ積分の被積分関数の数式を与えて、それをGRAPE-DR用の倍精度・4倍精度用のコードを出力することができる。積分方法としては並列化が容易でかつ被積分関数の特異性を捕まえることができる二重指数型変換積分公式を用いている。特に赤外発散を伴うようなループ積分については、3点ループ積分ではパソコンの50倍から100倍、4点ループ積分においても約100倍近くの性能を出すことが確認された。 より精度のよい計算結果を求めるためには、積分法等についての研究も進めている。とりわけ2ループ・ファインマン積分についての積分方法についても研究をすすめ一般的な解析的な式が求められていない、形のボックス・プラナー型について、直接与えらる積分の形のまま、計算することがわかった。 一方、超対称性理論においては、計算するべきファインマンループ積分の数が大量になる。まだ専用計算までは達してはいないが、超対称性理論における高次補正計算についても研究をすすめた。
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