これまでの研究により、上皮成長因子受容体EGFRまたはそのリガンドEGFをアルカリホスファターゼ(ALP)で標識し、単一細胞および細胞パターン(300細胞)表面のEGFR活性を電気化学的に定量することが可能になった。次に、EGFR発現が認められるA431細胞に対し、EGF添加後のEGFR活性の減少(ダウンレギュレーション)を電気化学的に定量した。 さらに、電気化学リアルタイムモニタリングを検討した。A431細胞にALP標識EGFを添加し、低温に保つことにより、EGFがEGFRに結合するがシグナル伝達は行われない状態にした。温度を37℃まで上昇するとシグナル伝達とダウンレギュレーションが開始される。しかしながら電気化学測定に関しては、ALP標識を行わない場合においても、電流応答変化が観測された。これはヒートショックあるいは内在性ホスファターゼ活性の変化を反映している可能性がある。酵素以外の標識として金ナノ粒子を使用してタンパク質のラベリングを検討した。 マクロファージの活性化過程をホールセル・レコーディング法により評価した。サイトカイン等活性化条件の違いにより電位依存性K^+チャンネルの発現量や膜容量に変化が認められた。パッチクランプ法と同等のガラスキャピラリーを探針として走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)により生細胞形状の取得に成功した。 我々の開発した電気化学多点計測デバイスにより、細胞から分泌されるアルカリホズファターゼ、細胞接着、化学発光イメージング、イムノアッセイ、DNAハイブリダイゼーションアッセイなど幅広く応用展開を推進することに成功した。
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