研究概要 |
本研究では、タンパク質や細胞の非特異的できるPEGの特性を模倣したNSポリペプチドを分子設計し、非特異的吸着が極めて低いナノ磁性粒子の創製に着手する。さらに、特異的な細胞を認識し、かつ非特異的吸着の低減を実現した細胞の磁気ラベリング技術を確立し、NSポリペフチドに関わるソフト界面の現象を明らかにする。本年度は、長さの異なるNSポリペプチドを導入したナノ磁性粒子を作製し、細胞に対する非特異的吸着抑制に関する検討を行った。 非荷電かつ極性アミノ酸であるアスパラギン(N)とセリン(S)で構成されたポリペプチド(N_4S)_nをNSポリペプチドと定義し、遺伝子融合技術により磁性細菌が合成するナノ磁性粒子上への発現を行った。抗体との結合性を示すProtein GにNSポリペプチド0,50,100merとなる様にそれぞれ発現したナノ磁性粒子の獲得に成功した。各粒子のPBS中における粒度分布測定を行った結果、NSポリペプチドの鎖長に比例して粒子同士の凝集形成を抑制することが示された。次にNSポリペフチドの細胞への非特異的吸着抑制に関して調べた。高い接着性を有するマクロファージ系の細胞(RAW264.7細胞)に対し、100merのNSポリペプチドを発現させた粒子を反応させた場合、非特異的回収率はNSポリペプチドをもたない粒子を用いた場合の1/5にまで低減可能であった。さらにProtein Gと100merのNSポリペプチドの融合タンパク質を発現させた磁性粒子にCD19抗体を導入し、末梢血からのCD19^+細胞の直接分離を試みたところ、95%以上の高純度分離が達成された。NSポリペフチドを導入したナノ磁性粒子は、目的細胞に対し高効率に結合する一方で目的外細胞には非特異的に吸着しない粒子であり、細胞標識用の磁性マテリアルとして有用であると考えられた。
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