研究概要 |
本研究では、高圧NMR技術を用いて、10~100nmサイズの水-in-CO_2エマルジョンを形成し、生体膜間を模倣した空間を作り出し、その内部の水分子の構造とダイナミクスを解明することを目的としている。まず、均一なWater-in-Oilエマルジョンを生成させる条件を検討したところ、分散剤として5w/v%ポリビニルアルコール(PVA500)を含む水溶液を、CH_2Cl_2+トルエン混合(密度1gcm^<-3>溶液に滴下した後、撹拌1分,界面活性剤添加を行った時のみ、均一な溶液として観測できるが、それ以外のケースでは、僅かな白濁あるいは油水分相が生じることを確認した。そこで、ハステロイ製の高圧セル内に、水溶液(5w/v%PVA500)と界面活性剤を添加した後、シリンジポンプにてCO_2ガスを導入、撹拌しながら、超臨界CO_2(sc-CO_2)中に水滴が分散するWater-in-CO_2エマルジョン作製を試みた。結果、フッ素系界面活性剤(1.0v/v% Ammonium pentadecafluorooctanoic acid(PFOA)あるいはPerfluoropolyether phosphate(FOMBLIN))を利用した時のみ、液滴の飛散や白濁が起こり始め、均一なエマルジョンが生成される様子が観測された。この現象は撹拌時間に応じて異なる傾向を示し、PFOA系では撹拌時間に関わらずこれ以上の変化は現れないが、FOMBLIN系においては60分経過した後に急激な白濁が進行し、極めて均一にエマルジョン化することが分かった。この要因として、二鎖のFOMBLINは二つのリン酸基を水相側へ、リン酸基間に存在するフッ素官能基を周囲のCO_2相側へ向けた洗濯バサミのような構造を採り、水相を安定に内包できるため、直鎖のPFOAに比べてWater-in-CO_2エマルジョンを形成し易いことが考えられる。さらに、Water-in-CO_2エマルジョンを形成させた後、バルブを切り替えて、ジルコニア製の高圧NMRセル内に送液するシステムを構築した。^<1>H-NMRケミカルシフト測定を行ったところ、3本のピークが観測され、これらのピークは異なる水分子状態が存在していることを示唆していることが分かった。
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