研究概要 |
固液界面に発生する電気二重層は,溶液と電極間の電位差のみが興味をもたれ,その距離依存性等の詳細が議論されことはすくない。Au(111)面上の末端に解離基をもつチオール自己組織化単分子膜のように表面電荷密度0.74μCm^<-2>が大きくなる場合は,電解質溶液中に存在する酸化還元体の界面での酸化還元反応速度が,帯電していない表面(酸化還元反応はブロックされる)にくらべて5桁以上も増加する。その増加は,解離基の解離度が1/100以下のところで起こることが明かとなった。この現象について我々は,末端解離基,電解質イオンを考慮したPrimitive Model(PM)を用いたモンテカルロ計算により電気2重層の構造,3次元電位分布を求めた。その3次元電位分布とButler-Volmer-Frumkin の理論を用いて酸化還元速度の電気二重層依存性を求め,実験結果と比較検討した。その結果,表面濃度が小さい解離基の回りの局所的な電気二重層の効果で5桁以上の酸化還元体の速度の増加が説明できることを示した。 本年は,上記の実験およびシミュレーションに加え,酸化還元の表面吸着波において電気二重層効果があらわるのかどうかを実験的に検証し,理論的には酸化還元体間に相互作用を取り入れた系をグランドカノニカルモンテカルロ法でシミュレートし表面吸着波の理論解析をおこなった。また,量子化学計算に基づいた分子動力学シミュレーションについての研究もおこなった。
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