本年度は、ソフト界面形成キャピラリーを作製し、等電点電気泳動濃縮に基づくイムノアッセイを実施した。 具体的には以下の方法を試みた。洗浄した角型キャピラリー内壁にポリジメチルアクリルアミド(PDMA)膜を作製した。未反応モノマーを十分に洗浄後真空乾燥させ、ここに蛍光標識抗体・両性電解質(キャリアーアンフォライト)を含む溶液を導入した。このキャピラリーを再度真空乾燥させることで、溶液に含まれる全ての抗体・両性電解質をPDMAゲル中に吸収させ、ソフト界面形成キャピラリーとした。 このキャピラリー内に抗原溶液を導入後、酸性・塩基性電解質を両端に接触させて電圧を印加し、蛍光顕微鏡下でCCD画像を取得して濃縮挙動を評価した。その結果、固定化試薬として、Rabbit-IgG-FITC、試料としてAnti-Rabbit-IgG-RBITCを用いた場合、濃縮時間がわずか約6-7分程度であるにもかかわらず、汎用の蛍光顕微鏡用CCDカメラを検出器とするpg/mLレベルの高感度検出が可能であり、簡便・迅速・高感度なイムノアッセイが実現できることがわかった。 また、ここでは複数のキャピラリー作製・マルチデバイス化を試みた。ここではキャピラリーを並列に埋め込むPDMS流路部と、酸・塩基電解質リザーバー部を独立して作製後組み合わせてPDMSデバイスを作製した。ここに、毛細管力で試料を導入したキャピラリーをはめ込み、電圧を印加して、CCDカメラに基づく多種同時検出を実施した。ここでは予備検討として、タンパク検出用ラベル化剤および異なるpI範囲のキャリアーアンフォライトを固定したキャピラリーを3種類用意し、マルチIEFを行ったところ、それぞれのキャピラリー単独でIEFを行った場合とほぼ同じ形状・位置の濃縮ピークが得られ、マルチIEFが実際に可能であることがわかった。 今後、異なる抗体を固定したキャピラリーのパラレル化により、簡便・高感度かつ、多種同時タンパク検出が可能なマルチイムノアッセイデバイスの開発が期待される。
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