水溶液中で外部刺激であるpHの変化により、会合と解離を制御可能な高分子ミセルを鋳型に用いることで、コアが中空の中空粒子の合成を試みた。側鎖にスルホネート基を含むブロックと脂肪酸を含むブロックからなるジブロック共重合体は酸性の水中で、脂肪酸を含むブロックが選択的にプロトン化されて疎水性のコアを形成し、その周囲を親水性のスルホネート基を含むブロックが覆った形のコア-シェル型高分子ミセルを形成する。高分子ミセルの形成・解離はpHで可逆的にコントロールできる。鋳型を形成するポリマーとは別に、電荷を持たない水溶性のポリエチレングリコール(PEG)とカチオン性の4級アミンを側鎖結合したモノマー(APTAC)と光架橋性のシンナモイル基を側鎖結合したモノマー(CEA)によるランダム共重合体からなるジブロック共重合体のPEG-b-P (APTAC-co-CEA)を合成した。このポリマーを、鋳型となるアニオン性高分子ミセルのシェルの電荷を中和するように水中で混合すると、鋳型高分子ミセルのアニオン性のシェルとカチオン性ジブロック共重合体の静電相互作用により、シェル層でポリイオンコンプレックス(PIC)を形成する、この会合体は鋳型の高分子ミセルが形成する疎水性コア周囲を、光架橋基を含むPICのシェル層が覆い、最外層をPEGコロナ鎖が覆う形のコア-シェル-コロナ型の3層ミセルとなる。紫外光を照射することで、シェル層に含まれるシンナモイル基の光二量化反応により架橋を行った。その後、水溶液をアルカリ性にすることで鋳型高分子ミセルのコアを解離させ、高濃度の食塩水に対して透析を行うことで、シェル層の静電相互作用を遮蔽してPICを壊し、鋳型を形成していたポリアニオンを取り除くことで中空粒子を作製した。中空粒子を用いた低分子化合物の空孔内部への取り込みと放出を蛍光プローブを用いた実験により確かめた。
|