電気化学信号発生団としてフェロセン、信号抑制団としてβ-シクロデキストリンを両端に有するプローブを開発した。このプローブは、ターゲット認識前はプローブ構造が柔軟なため両団が弱い内包錯体を形成して信号が抑制されており、認識後は二重らせんが形成されプローブ構造の剛直化による錯体解離が起こった結果信号が回復することで、認識の有無を知らせる。このプローブを用いて、バルク溶液中でのターゲットDNAとのハイブリッド形成によるフェロセン酸化還元信号の変化を電気化学的に観測した。 プローブDNAのみを含む測定溶液では、0.3V付近から電流値の上昇が見られ0.4V付近で定常電流値に達するS字曲線が得られた。一方で、プローブDNAとターゲットDNAとを含む溶液では、0.25V付近から電流値の上昇が見られた。これは、内包錯体を形成し酸化還元反応が抑制されていたフェロセンでは酸化還元電位が正にシフトしていたところ、ハイブリッド形成後は錯体が解離したためにシフト前の電位に戻ったためと考えられる。ハイブリッド形成前後で電流値上昇(0.3Vでは約5倍上昇)が観測され、今回開発したプローブDNAにより、従来課題であった"signal-on"型の自己報告型センシングが可能となったと言える。 同時に遺伝子センサのデバイス化の基礎検討も行った。蒸着した金薄膜をエッチングして作製したガラス基板および配線パターンを同時焼成して作製したセラミックス基板に関して、遺伝子センサアレイに向けた微小電極アレイチップ化を検討した。ガラス基板においてセンサアレイチップを作製し、配列選択的な遺伝子検出が可能であることを明らかにした。一方で、ガラス基板と比較して、セラミックス基板は耐熱性・耐薬品性に優れており、また集積化にも適していることが分かった。この成果を踏まえることで、複数遺伝子の迅速・簡便な同時検出が可能となると期待される。
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