研究概要 |
本研究は、高分子ミセルのABC現象(Accelerated Blood Clearance現象)解析を通して、ソフト界面における免疫認識機構を検証し、固形がん診断・治療に有効なキャリヤーシステムを確立することを目的とする。 1, 高分子合成及び高分子ミセル作製 ミセル内核がポリエチレングリコール-b-ポリアミノ酸ブロックコポリマーからミセル内核が親水性の(a)MRI造影剤と、疎水性内核を有する(b)疎水性薬物のキャリヤーの2種の高分子ミセルを作製した。今年度は、(b)のFITC蛍光ラベル体を合成し、その解析を優先したので、鎖長を変化させたブロックコポリマーは合成しなかった。 2, ABC現象の解析 ・Balb/cマウスにある間隔をおいて高分子ミセルあるいはポジティブコントロールのPEG-修飾リポソームを2回投与し、2回目のキャリヤーの血中濃度を測定してABC現象の有無を解析した。結果は、 ・親水性内核のMRI造影剤高分子ミセルではABC現象が起きない。特に興味深いのは、1回目にPEG-修飾リポソームでABC現象を起こした状態でも、MRI造影剤高分子ミセルの2回目投与時の血中動態の変化がなかったことである。この事実は、ABC現象を起こす免疫機能が、単にPEG鎖を認識しているのではなく、PEGが結合しているソフト界面を認識していることを強く示唆するものであり、興味深い。 ・疎水性内核の高分子ミセルではABC現象が起きる場合と起きない場合があることがわかった。また、起きる場合でも、2回目の投与をFITCラベル高分子ミセル(疎水性内核)で測定すると血中動態の変化は観測されなかった。この事実も、ABC現象が、PEGが結合しているソフト界面認識に起因することを支持する。
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