近年、Alzheimer(AD)やParkinson病(PD)のようなアミロイドーシスが関与する凝集体の生成機構に注目が集まっている。タンパク質のミスフォールディングの結果として生じるamyloid fibrilに関する多くの研究がこれまで行われているが、タンパク質が変性過程を経て凝集体へと変化する詳細なメカニズムは明らかにされていない。このような動的なタンパク質の構造変化を追跡することが可能なら、これまで得られなかったような、in vivoにおけるamyloid凝集機構に関する新たな知見を得ることが可能となるだろう。しかし異方性存在下でのキラリティー測定には非溶液状態特有の巨視的異方性、つまり直線複屈折、直線二色性と装置の非理想性とのカップリング効果により見かけのシグナルが生じる。結果として求めるキラルsenseに由来する正しいシグナルを得ることができない。したがって、市販の分光計では異方性存在下でのキラリティー計測は非常に困難であるとされてきた。しかし、我々は、異方性存在下でのキラリティー測定可能な全偏光対応型分光計(UCS-1)、垂直型UCS-2及びStokes-Mueller matrix法に基づく解析法を独自に開発した。これらにより上記問題点を解決し真のキラリティー測定が可能となった。本課題では、ADやPDの原因タンパク質であるβ-amyloidやα-synucleinおよびタンパク凝集の多型モデルとして知られているinsulinについて、UCS-1及びUCS-2を用いた濃縮系でのキラリティー測定から、凝集機構についての新たな物理化学的な知見を得ることを目的とした。キャストフィルム、Langmuir-Blodgett膜などの非溶液状態、溶液状態では、これらのタンパクが異なった2次構造をとることを明らかにし、異なった環境要因を考察した。
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