研究概要 |
本研究では、1または少数アミノ酸置換が引き起こす揺らぎを設計し、その効果を、BPTI-[5,55](58残基)とデングウイルス由来D蛋白質の第3ドメイン(E3D;96残基)などのモデル蛋白質を用いて実験的に検証する。明らかにする点は:1)少数残基置換によって局所的な揺らぎを導入する事ができるか。2)局所的な揺らぎを抑えることができるか。3)その揺らぎが蛋白質の物性(構造安定性・結合活性)にどの様に影響するかの3点である。本研究で解析する揺らぎの変化は、すべて1残基もしくは少数残基の置換によるため、揺らぎと置換の因果関係がより明確かっ定量的に解明できると期待される。 平成21年度では、BPTI-[5,55]の14番と38番の残基を中心とするトリプシン結合部位が座位するループ領域の主鎖構造の揺らぎがBPTI-[5,55]の安定性に及ぼす影響を調べた。そのため、14番と38番目の残基をそれぞれ、Gly,Ala,Valに置換した9種類の変異体の発現系を構築し、精製法を確立し、全変異体の熱安定性を円二色性分光法(CD)を用いて測定した。さらに、E3Dに対しては大量発現を構築し、精製法を確立した。 平成22年度では、BPTIの9種類の変異体の熱力学パラメータを示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定する。さらに、熱安定性が高かった変異体においては、その立体構造を、X線結晶構造解析法を用いて決定し、温度因子や主鎖の局所的な構造変形から揺らぎを評価する。さらに、E3Dにおいても同様の実験を行う。
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