研究概要 |
蛋白質は、無数の変性状態の構造の中から唯一の構造に自発的に折り畳むことで機能を発揮する。蛋白質が折り畳んで機能する性質の分子論的な理解はなされていない。これは、蛋白質が折り畳む運動や機能を発現する運動の特性について、十分な解明がすすんでいないことが一因である。特に、蛋白質の並進拡散運動の特性は、これまでほとんど研究されていない。本研究では、蛋白質の並進拡散運動を検出するための実験手法を開発し、蛋白質の並進運動の特性と、蛋白質の並進拡散運動と分子内運動の相関を解明することを目的とした。本年度は,始めに,タンパク質をフローセル内のなかにトラップし,一分子の並進拡散運動を観察するための基礎的な技術の開発に努めた。試行錯誤の結果,フローセル内に閉じ込められたタンパク質分子を数秒以上の長時間にわたって継続観察することに成功した。次に,並進拡散運動を観察するためのモデルタンパク質として,ベータラクトグロブリンを選び,蛍光色素のラベル化を行った。以上の準備実験の末,タンパク質の並進運動を観察するための技術的な基盤が完成した。
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