公募研究
細菌のK+選択性イオンチャネルであるKcsAチャネルの構造変化を蛍光強度の変化として捉えた。蛍光分子テトラメチルローダミン(TMR)で特異的に標識されたKcsAチャネルの蛍光強度をチャネルゲート活性化(pH4)と不活性化条件下(pH7)で測定した。TMRは疎水性環境下では蛍光強度が高く、親水性環境下ではその強度が低いことが知られており、蛍光強度変化から蛍光分子の環境変化、即ちタンパクの構造変化が検出される。その結果、膜貫通領域のC末端とそれに続く細胞内領域の一部において、活性化(開)状態(pH4)では蛍光強度が高く、不活性化(閉)状態(pH7)では低いことが分かった。このことから、これらの領域は活性化(開)状態では疎水性の環境下に存在し、不活性化(閉)状態では親水性環境下に存在すると考えられる。また、pH4での高い蛍光は、膜局在消光剤(DPA)によって消光されたことから、これらの領域はチャネルの活性化に伴って膜に向かって移動することが示された。また、チャネル電流計測用の新しい人工膜作製法を開発した。1つは、ハイドロゲルとハイドロゲルで脂質溶液を挟み込むことによって脂質二重層膜を作製する方法である。従来法ではゲル/溶液界面に脂質二重層膜が自然に形成されるのを待ったが、ゲル同士で脂質溶液を挟むことによって迅速に脂質二重層膜を形成することができ、イオンチャネルの組み込みも促進された。2つ目は、コバルトアフィニティーゲルビーズにHisタグ付きのチャネルタンパク質を固定し、そのビーズ上に脂質二重層膜を作製する方法である。この方法は、チャネルがビーズに固定することができる上、従来法に比べて脂質二重層膜への組み込み確率が高かった。
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Journal of Biological Chemistry 285
ページ: 3777-3783
Analytical Chemistry 81(8)
ページ: 3151-3154
Langmuir (印刷中)