研究概要 |
1. ユビキチンの準安定構造の安定性と機能の相関関係について明らかにすることを目的とする。ユビキチン変異体(P37A/P38A, K11A, E34A, Q41A, Q41N)を作成し、CD測定を行い構造形成の有無を確認した。P37A/P38Aについて、高圧力NMR測定(30-3kbar)を行った。圧力下の15Nスピン緩和測定(T1, T2, NOE)測定から、圧力下ではps-nsの早い運動は変化しないが、特定の部位においてus-msの遅い運動が増加することが分かった。この結果は、WTの結果と類似しており、天然構造から準安定構造への転移が生じたと考えられる。圧力下のHSQC測定からは、複数の信号で1H,15Nの化学シフトがシグモイド様の変化を示したことからも、準安定構造への転移が生じたと考えられる。化学シフト変化を天然構造と準安定構造の2状態転移と考えて、ΔG(ギブス自由エネルギー差),ΔV(体積差)を算出した。また、加圧とともに一分のピークでは、強度が減少し、変性状態に特有の信号が新たに生じた。このことから、一部の部位で、局所的な変性状態への転移が生じたと考えられ、局所変性構造の存在を示唆する。この点もWTの結果と一致している。信号強度の変化からΔG,ΔVを算出した。WTと比べP37A/P38Aでは、準安定構造、局所変性構造がともに安定化されていた(分布率が増えていた)。WTについて、ユビキチン相互作用モチーフ(UIM)との相互作用について等温滴定カロリメトリーITCを用いて結合定数、結合に伴うΔG,ΔS,ΔHを求めた。今後、変異体についてITC測定を行い、相互作用の変化について比較解析を行う。 2. ユビキチンの準安定構造N2の安定性や体積差を精度良く求めるために、高圧力下でR2緩和分散測定を行った(30bar, 2kbar, 2.5kbar)。フランスモンペリエ大学Christian Roumestand教授との共同研究として、R2緩和分散解析が進行中である。 3. DNA結合蛋白質のλCroについて人工設計蛋白質が作製された(富山県立大学磯貝ら)。天然型と人工設計λCroについて、構造揺らぎの比較解析を行うことを目的として、高圧力NMR測定を計画している。21年度は、発現・精製系の確立を行った。質量分析装置により分子量と純度の測定を行った
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