公募研究
iPS細胞誘導因子の1つである転写因子Oct3/4のDNA認識機構を分子の動きの面から解明するべく、本年度は、遊離状態のOct3/4が元々どのような運動性を示すのか明らかにすることを目的として研究を進めた。まずは大腸菌発現系を用いて、NMR測定用に安定同位体標識したOct3/4の大量発現系の構築を試みた。まずはHisタグをOct3/4のDNA結合ドメインのN末端に付加し培養条件の検討を行った。しかし、どのような培養条件でもOct3/4は封入体でしか発現してこなかったため、精製においては8M尿素でOct3/4の封入体を可溶化し、Ni-NTAカラムで精製を行った。この場合、Ni-NTA上で尿素濃度を下げてリフォールディングを行うとNi-NTA樹脂に吸着してしまい、Oct3/4が全く得られなかったため、8M尿素を含むバッファーでNi-NTAからの溶出を行ったところ、不純物をほとんど含まないOct3/4を大量に得ることができた。ただし、透析により尿素を除くと、全てのOct3/4が沈殿した。これはおそらくOct3/4に2つあるDNA結合ドメインの等電点が大きく異なるためと考えられる。そこで、バッファーのpHを変えたり、蛋白質の可溶化に定評のあるアルギニンを添加してみたりした。この結果、アルギニンが可溶化には有効で、アルギニンを含むバッファーでNMRシグナルも観測できるようになり始めた。現在は、2つのDNA結合ドメインの等電点が異なる問題に関して、バッファーの検討を行っていると同時に、それぞれのDNA結合ドメインを切り出したもののクローニングも開始した。
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FEBS J. 276
ページ: 4437-4447