DNA結合蛋白質がDNA上を移動する際は、効率的配列探索の観点から、柔軟性の高い状態が保たれていると考えられるが、そのときの蛋白質の様子については未解明の点が多い。本研究課題では、分子動力学シミュレーションにより、蛋白質がDNA上をスライドする様子を再現し、スライド過程におけるそれらの振舞いを特徴づけることを目標に研究を進めている。平成21年度は、非特異的結合状態と特異的結合状態のそれぞれについてDNA-ラックリプレッサー複合体の分子動力学シミュレーションを行い、タンパク質と周囲の水の挙動を解析した。各状態における水分子の挙動を特徴づけることができた。今後、蛋白質の揺らぎと水分子の関係に注目して、解析を続ける予定である。さらに、ラックリプレッサーがDNA上をスライドする過程の分子動力学シミュレーションを実行するために、バイアスフォースを加えてラックリプレッサーをスライドさせるプログラムを開発中である。平成21年度は、アルゴリズムの理論的背景を調査し、プログラムの設計を行った。引き続きプログラム開発を進め、実践段階のシミュレーションを行う。
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