本年度は、以下に述べる研究を行った。 1、 紫外部の二光子励起蛍光を利用した蛍光相関分光計の設計と製作 これまで我々が使用していた可視域用蛍光相関分光計に対し、蛍光顕微鏡システム(Nikon Eclipse TE2000-U)部分の対物レンズとして新たに340nmまでの波長域の紫外光を透過する対物レンズ(Nikon CFIスーパーフルオール100xH)を導入し、可視短パルスによる二光子励起一紫外蛍光検出の組み合わせが可能となるように改造した。また、この対物レンズの集光能力を保ちながらその焦点領域に正確かつ再現性良く試料を供給するため、マイクロ流路チップ(Translume TUC-100-100-L-1-170)とシリンジポンプ(KD Scientific KDS210)を導入した。現在高効率な紫外蛍光フォトン収集のための専用検出光学系の構築を行っている。これらの工夫により、紫外部で蛍光を発する天然蛍光色素の蛍光相関分光へ道が開けると期待される。 2、 蛍光寿命揺らぎを観測する蛍光相関分光法の生物学的問題への応用 我々が独自に開発した蛍光寿命揺らぎを観測する新しい蛍光相関分光法を応用し、生体高分子の揺らぎの研究を開始した。本年度は蛍光ラベルしたヘアピン型DNAについて予備的な実験を行い、マイクロ秒オーダーの自発的な構造揺らぎに由来すると考えられる信号を得た。また、本学術領域の他の研究者との本手法を用いた共同研究もすでに開始している。
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