蛋白質の機能発現機構の解明には、蛋白質の揺らぎの理解が必要である。しかし、アミノ酸配列と蛋白質揺らぎとの対応関係は未解明である。本研究では、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の1アミノ酸置換変異体を網羅的に作成し、揺らぎの指標(安定性、活性、構造多形性)を測定することにより、網羅的1アミノ酸置換データベースを作成し、アミノ酸配列と蛋白質揺らぎとの対応関係の解明を目指す。平成20年度までに全変異体の作成と活性パラメタの測定は完了しており、あとは200個程度の変異体について安定性と構造特性の測定を行うことにより、DHFRの網羅的1アミノ酸置換データベースが完成する予定であった。平成21年度は、当初の予定通り、残りの変異体の特徴づけを行い、データベースを完成させることができた。次に、こうして作成されたデータベースを用いて、DHFRのアミノ酸配列と揺らぎ(活性、安定性、構造多形性)の対応関係の解明を目指した解析を行った。具体的には、実験結果と蛋白質構造・配列との相関解析などの統計的解析を行った。その結果、蛋白質の安定性や活性を向上させる変異部位やアミノ酸置換の種類、蛋白質の凝集性を決める因子など、様々な新しい知見が得られた。現在、これらの結果をまとめた論文を作成中である。
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