研究概要 |
大きく湾曲したケイ素-ケイ素二重結合をもつと期待されるトリシクロノナシレンの前駆体テトラブロモビシクロノナシランを選択的に収率よく合成し、その分子構造をX線結晶構造解析で明らかにした。得られたテトラブロモノナシランを4当量のカリウムグラファイトで還元的脱臭素化したところ、目的化合物の構造異性体である、分子内に3,4,5,6員環を合わせもつ多環式ノナシランが黄色結晶として得られた。X線結晶構造解析の結果、得られた多環式ノナシランは骨格内に反転したケイ素-ケイ素σ結合を含む特異な構造を持つことが明らかになった。さらに、低温で捕捉反応を行ったところ、目的とするトリシクロノナシレンの捕捉体を得ることに成功し、低温ではトリシクロノナシレンが安定に生成していることを見出した。また、ケイ素-ケイ素二重結合周りの構造(折れ曲がりと捻じれ)と電子状態の相関を明らかにする目的で、環骨格で二重結合周りの構造が制御されたジシレン(ケイ素-ケイ素二重結合化合物)の合成を目指し、3,7位に官能基変化可能なフェニル基をもつ二環式ジシレン(オクタシラビシクロ[3.3.0]オクタ-1(5)-エン)を合成し、分別再結晶によりCiSおよびtrans体をそれぞれ22%ずつ、空気に不安定な橙色の結晶として得た。これらのジシレンに四塩化炭素を反応させたところ、二重結合ケイ素上に塩素がアンチ付加した化合物が選択的に得られ、立体選択的にケイ素-ケイ素二重結合部分が保護できることを明らかにした。関連して環状アルキル基を持つケイ素-窒素二重結合化合物(シランイミン)を合成し窒素上置換基が構造と電子状態に及ぼす効果を明らかにするとともに、1,3-シリル転位によりシラエナミンを与える新しい異性化反応を見出した。
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