我々は既に、ジホウ素化ポルフィリンから容易に得られるジヒドロキシポルフィリンをDDQで処理するとシクロファン型のジケトポルフィリン二量体が得られることを見いだし、そのX線構造解析に成功している。π電子同士の反発のため、ポルフィリンは湾曲した構造をしていることが分かった。ジケトポルフィリン二量体の生成機構については、ジケトポルフィリンビラジカル種が関与しているものと考えている。本研究では、ジケトポルフィリンビラジカル種を置換基の導入によって安定化して単離することを計画し、カルボニル基の周辺に立体障害を導入したイミン体の合成を試みた。ジイミノポルフィリンは、ポルフィリンのβ位に嵩高いアミノ基を二つ導入し、これを酸化することによって合成できると考え、パラジウム触媒によるアミノ化反応を検討した。まず、ジヒドロキシポルフィリンをトリフラートに変換し、パラジウム触媒存在下ブチルアミンとカップリングさせ、目的とするジアミノポルフィリンを中程度の収率で合成することに成功した。しかし、これをDDQで酸化したところジイミノポルフィリンは得られず、二量体と思われる生成物が得られることが分かった。窒素上の置換基の嵩高さが不十分であると考えられる。そこで、かさ高い置換基としてトリフェニルメチル基を導入したジアミノポルフィリンの合成を行った。トリフラートにパラジウム触媒下ベンゾフェノンイミンを作用させ、加水分解し、ジアミノポルフィリンを合成し、トリフェニルメチル化することで目的物を合成することに成功した。
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