ポルフィリンは代表的な機能性π電子化合物であるが、その合成は効率的でないことが多い。そこで、遷移金属触媒反応に基づく新しいポルフィリン類縁体合成法の開発に取り組んだ。ポルフィリン類縁体として、ボロンジピリン(BODIPY)をブタジインで架橋した二量体を設計し、これをパラジウム触媒と銅触媒を駆使して合成することに成功した。さらに、この化合物のX線結晶構造解析にも成功し、BODIPY二量体が高い平面性をもっていることを明らかにした。この化合物は、その共役系上に24個のπ電子をもつことから反芳香族性であることが考えられる。^1HNMRスペクトル測定、紫外可視近赤外スペクトル測定、および分子軌道計算により、BODIPY二量体が実際に強い反芳香族性をもっていることを明らかにした。さらに、環状BODIPY三量体も生成していることを見いだした。この化合物のX線結晶構造解析からやはり平面的な構造をもち、36個のπ電子に由来する弱い反芳香族性をもつことを明らかにした。 一般的にBODIPYは強い蛍光をもつ物質として知られているにもかかわらず、合成した環状BODIPY二量体および三量体は全く蛍光を示さない。これは反芳香族性によりHOMO-LUMO gapが減少したためと考えられる。ブタジイン架橋部分を水素添加し、アルキル架橋BODIPY二量体を得た。この化合物では、共役が切断されたことにより、BODIPY本来の強い蛍光を示した。 さらに、ジピリン金属錯体をビルディングブロックとし、パラジウム触媒を用いてアミンとカップリングさせるとジアザポルフィリンとアザコロールが得られることを見いだした。
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