研究概要 |
核置換トリピランと2,5位が官能基化されたピロールあるいはチオフェンとの酸触媒[3+1]脱水縮合環化、引き続く環のπ系の酸化により、リン上にペンタフルオロフェニル(C_6F_5)基を持つ核置換ポルフィリンを合成した。最終段階での副反応が抑制されたため、出発原料から目的物までの総収率はリン上にフェニル基を持つポルフィリンの合成に比べ大幅に向上した。また、P-C_6F_5体の還元電位は、P-Ph体の還元電位に比べてわずかながら正側にシフトしており、電子求引性のC_6F_5基をリン上に導入することで、ポルフィリン環がやや還元されやすくなることが明らかとなった。一方、P-C_6F_5体とP-Ph体のSoret帯の極大波長には大きな差が認められなかった。P-C_6F_5体はPd(dba)_2と室温で反応して暗緑色のパラジウム(II)-PSN_2イソフロリン錯体を定量的に与えるが、この錯体は弱いパラトロピック環電流を示した。NMRスペクトルおよびDFT計算により求めたNICS値から、リン上のPh基とC_6F_5基が環状π系の芳香族性や反芳香族性に与える摂動には大きな差がないことが明らかとなった。さらに、P-C_6F_5トリピランとα位が官能基化されたビチオフェン誘導体との酸触媒環化縮合反応により、PS_2N_2型核置換サッフィリンを合成した。この化合物はホスホール環とチオフェン環を含む初めての環拡張核置換ポルフィリンであり、吸収極大は18π系のPSN_2参照化合物に比べてさらに長波長側にシフトする。また、NMRおよび吸収スペクトルの測定により、PS_2N_2型核置換サッフィリンが22πの芳香族性を示すことを確認している。
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