公募研究
リンや硫黄などの典型元素とポルフィリンの融合により新奇なπ空間を構築し、基礎物性の解明および光・電子材料としての利用を目指して研究を進めてきたが、平成22年度は以下の課題に取り組んだ。(1)拡張π平面を持つ金属架橋ポルフィリン二量体の光物性と電気化学特性に対する金属架橋効果の解明、(2)湾曲したπ系を持つメソ置換カリックスフィリンの合成、および(3)ホスホールを含む核置換ポルフィリンの参照化合物(鎖状π系)の合成と物性評価。(1)メソ-ホスフィノポルフィリンと2価のパラジウム塩あるいは白金塩との反応により得られる金属架橋ポルフィリン二量体は、高いπ平面性を持ち、金属-π結合に由来する特異な吸収特性を示すが、架橋金属が二量体の光物性や電気化学特性に与える影響については、十分に解釈できていなかった。そこで、金属架橋ポルフィリン二量体および参照化合物の光ダイナミクス、酸化還元挙動、MCDスペクトルの測定を行い、架橋金属が諸物性に与える影響を明らかにした。(2)歪んだポルフィリン系π空間を集積化する新しい方法論を提案する目的で、メソ位にリン原子を組み込んだメソ置換カリックスフィリン(5-ホスファフロリン)を新たに設計し、ジチエニルホスフィンあるいはジフリルホスフィン誘導体とジピロメタンとの脱水縮合反応を利用して合成した。得られた化合物の一部に関してはX線結晶構造解析に成功し、リン架橋により環状π系が湾曲した構造をとり、リン上の非共有電子対は環外へ配向することを明らかにした。(3)ホスホールのα位にπ共役官能基を導入する効率的な合成法を確立し、ポルフィリンの参照系となる種々の鎖状π共役ホスホールを構築し、その構造-物性相関を明らかにした。
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Heteroatom Chemistry
巻: (印刷中)
Phosphorus, Sulfur Silicon Relat.Elem.
巻: 185 ページ: 1098-1107
C.R.Chimie
巻: 13 ページ: 1035-1047