本研究では、マイクロ波による電極レス伝導度測定法(Time-Resolved Microwave Conductivity : TRMC法)をその核とし、(1)TRMC法に用いるマイクロ波共振器内への多層電極構造の導入、(2)TRMC法による過渡伝導度と多層電極構造Field Effect Transistor : FET特性のin-situ評価、(3)電極界面への選択的光励起によるTime-of-Flight : TOF、の3項目により、π電子化合物およびその集積構造体の重要な電子機能である電荷移動度について、それぞれ異なる3つの手法:TRMC-FET-TOFによる評価を、まったく同一の素子において、完全同時に行い、それぞれの特性を、「1日以内」の極短時間で包括的解釈できるシステムを構築する。 TRMC法によって得られる電荷移動度について、特に有機・無機半導体中の電気伝導度・電荷移動度を、まずはMC-4端子法-Hall効果測定-FET測定-TOF測定の相互オフライン測定によって計測・比較した結果、不純物ドープされた無機、及び酸化物半導体材料においてはMC法と4端子法・Hall効果測定法により得られた値がおよそ0.001~100Sm^<-1>の5ケタにわたる範囲でほぼ完全に一致した。一方、ホッピング律速であると考えられるμ<0.1cm^2V^<-1>s^<-1>の領域において、共役高分子鎖を対象に計測した結果、MC法はTOF法に比べおよそ2桁高い移動度を示した。共役電子構造の伸展について、高分子骨格剛直性を指標として評価した結果、MC法が最も良い相関を示し、共役π空間の本質的電荷輸送特性を明らかにする指標として、MC法がきわめて有効であると結論した。
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