研究概要 |
申請者は、逆Diels-Alder反応によりπ電子系を融合させる方法を開発し、さまざまな高共役π電子系化合物の合成に成功してきた。この方法を用いてベンゼン環を内部や環系に融合した拡張ポルフィリン類の合成に挑戦した。内部ベンゼン縮環ヘキサフィリンのπ電子系は、反芳香族となるはずであるがGaussian計算ではベンゼンとヘキサフィリンの二つの芳香族π電子系であると示唆された。一方、ルビリンの内部にベンゼン環を構築した内部ベンゼン縮環ルビリンの全π電子系も、やはり反芳香族であるが、2つの14π芳香族電子系の和であることが予測されている。これらの化合物とともに、これらの半分の単位である化合物類の合成を目指した。 1. ジヒドロBCOD渡環ヘキサフィリンを0,2%の収率で得ることに成功した。現在この収率向上のための条件検討を行っている。 2. BCOD環連結ジピロールは、アセトキシメチルピロールと反応することにより、ビス(ジピロメタン)とすることができた。これをアルデヒドと反応させることにより二重NC反転フロリンの電子系をもつ化合物の合成に成功した。この化合物のUVは非環状にもかかわらずポルフィリンと非常に似ており、Soret帯とQ帯様の吸収を有していた。これらの吸収は、TD-DFTとMCDにより、各々の電子遷移と関連付けることができた。この化合物の熱挙動を検討したところ、逆Diels-Alder反応は進行しなかった。本化合物を用いて、異なった電子状態からの分解π電子系拡張を試みる。 3. 分解の条件を変えるために、ビシクロ[2.2.1]ヘプタジエン-7-オン縮環ピロールの合成を行ったところ、室温でも容易に分解し、イソインドールを与えることを見出した。この構造を熱分解では合成しにくいπ電子系の構築を検討している。
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