近年、平面構造を強制したシクロオクタテトラエン(COT)の反芳香族性に関する研究が注目を集めている。さらにこのような"反芳香環"を2枚向かい合わせた分子において、空間を介する相互作用により芳香族性が誘起されるという理論研究が最近相次いで報告されている。このような背景のもと、本研究では、我々のこれまでの平面COTの反芳香族性に関する研究、ならびに含硫黄π共役系の基礎物性に関する研究および有機FETへの応用研究を基に、これらの独創的な成果を発展的に融合させることにより、"反芳香環"によって誘起される芳香族性のπ空間に関する基礎および応用研究を推進することを目的とする。最終年度は嵩高い置換基を用いることなく平面構造を実現することが可能な硫黄架橋の環状チオフェン4量体に種々の置換基を導入し、その中でトリイソプロピルシリルエチニル体の単結晶の素子で高い移動度(μh=0.40andμe=0.18cm^2V^<-1>s^<-1>)で両極性挙動を示すことを明らかにした。
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