2次元ダイマーモット絶縁体で、フラストレーションによって誘起されたスピン液体のダイマーモット絶縁体」として話題をよぶκ-ET2Cu2(CN)3に着目した研究を行った。ダイマーモット絶縁体においては、電荷の誘電体としての自由度が量子ダイポールの形で記述できることを示し、量子ダイポールスピン模型を導出した。この模型において、量子ダイポールがスピン自由度と結合した結果、電子間相互作用の強い領域で、スピン液体状態が得られることなどを明らかにした。この系では、6K付近に帯磁率の異常が見つかっており、最近、6Kより高温の領域で誘電応答にリラクサー特性が観測された。リラクサー特性は系に導入された不純物に由来することが知られているが、本系は不純物がほとんど存在しない。我々は強相関効果に基づいた新しい本質的不均一現象の可能性を考慮し、現在も研究を進めている。 一方、負の巨大磁気抵抗効果について実験で活発に研究されている1次元π-d系のフタロシアニン錯体TPP[FePc(CN)_2]_2を念頭に、局在イジングスピン鎖が強相関電子系とカップルした1次元拡張イジング近藤模型を密度行列繰りこみ群を用いて解析した。相互作用が強い領域で、局在スピンと電荷秩序との相関を調べた結果、電子系の基底状態の磁気的なセクターに強い擬縮退が存在することが明らかになった。この電荷秩序と磁性が絡むことによって得られた擬縮退を利用すると、外場(磁場)の印加に敏感な電子状態が期待できる。実際、フタロシアニン錯体は巨大な負の磁気抵抗を持つことが知られており、最近報告された実験結果との関連も議論した。
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