研究概要 |
筋細胞などの生体材料は,自己修復機能や自己組織化,また自律拍動や化学エネルギーによる駆動など様々な特徴を有している.我々はこのような機能を持つ筋細胞をMEMSの動力源として利用し,心筋マイクロポンプ等のハイブリッドマイクロメカニカルシステムを開発してきた.しかしながら,任意にデバイス設計を行うためには,細胞レベルの材料と構造体の界面の材質や状態を知る必要がある.そこで本研究では細胞レベルの生体材料を転写することで様々な生体機能を持つロボットを作る基盤技術の開発を行う.筋細胞は機械部品である無機構造体に自らの接着力で接着しているが,駆動に伴い細胞接着界面には、筋細胞の収縮による外力がかかる.この外力が細胞の接着力より大きければ,細胞はシステムからはく離し,システムは駆動できず故障してしまう.このようなシステムの故障を防ぐためには,設計段階から細胞の接着力を考慮した設計を行い,界面の状態を定量的に評価する必要がある.そこで,本研究では,シート状に加工した細胞シートを転写した構造体を作成し,ISOやJIS規格で定義されている90度はく離試験を参考とした細胞シートの測定方法を提案した.今年度は,2次元平面状にコンフルエントに培養された細胞シートを培養基材上から垂直方向に引き剥がし,このときのはく離力を接着力として測定をするために,接着力測定システムを構築した.実験では,形成された細胞を特殊な冶具で把持し引き剥がしを行い,微小力センサを使用し接着力を測定した.今後,様々な材質の基板上での接着力評価を行い,セルラーインプリンティングによる生体機能創発ロボティクスの試作を行ってく.
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