研究概要 |
組織工学の技術を用いて細胞から組織を構築することができる.例えば,筋細胞からリングや梁といった形状の筋組織を構築した例が報告されている.人工的に構築された筋組織をバイオロボットとして利用することは,細胞由来の高エネルギー効率や生体適合性から,医療やエネルギー分野における応用展開が期待されている.このバイオロボットの高機能化に向けて,細胞から3次元的な組織を構築することが必要である.しかし,現在の組織工学技術では,2次元的パターンを立体的に構築したものを除いて,3次元形態をもつ組織,例えばお椀状組織などの3次元構築は困難である.そこで筋細胞を3次元組織へと構築する新たな方法が必要とされている.一方で生命は,複雑な3次元形態を,自己組織化的に獲得している.この生命の形態発生のメカニズムを解明し,複雑な形態をもつ組織を構築することが期待できる.そこで我々は,粘菌が餌環境に合わせて形態を変えて適応する現象に着目した.粘菌は与えられた栄養分布に合わせて組織の形態を換え,線路網に似た複雑な組織形態を作り上げる.本研究では,この現象から,細胞自体が外部の環境と相互作用しながら,形と機能を外部構造体にインプリンティングし、自己組織化的に機能性3次元組織を構築することができると考え,生体機能を創発したマイクロロボットの設計,試作を行った.実験では,3次元組織内に内包する筋細胞に起因した運動機能を発現することができれば,バイオロボットとしての有用性を示すことができる.これらの実証に向けて,今年度は,細胞によって構成されたお椀状組織をクラゲ構造体と定義し,細胞に影響を与える栄養分布を決めることで,心筋細胞からクラゲ構造体を自己組織的に構築することを行った.さらにクラゲ構造体に推進機能を発現させた.また,薬剤を用いて,クラゲ構造体の拍動周波数の制御を行い,駆動制御実験に成功した.
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