(A) 核数を特定した環状レニウム錯体の高収率合成法の開発 直鎖状レニウム(I)4核錯体を出発原料として用い、環状レニウム4核錯体を高選択的かつ高収率で得る方法を開発することに成功した (B) 環の形状や大きさによる環状レニウム多核錯体の発光特性制御 種々の2座リン配位子により架橋された環状多核錯体を合成した。1分子内に含まれる核数を2-6まで変えたものを合成し、これら2つの要因で変化した、環状錯体における環の形状や大きさ、剛直性とその発光特性の関係を明らかにした。また、各ユニットのジイミン配位子の各置換位置にメチル基等を導入することで、その立体障害による構造変化の影響を検討した。なお、環状錯体の構造決定に関しては、連携研究者がエネルギー加速器研究機構のビームライン(PF-AR)を利用して行った。特に、配位子間π-π相互作用がユニット内だけに留まらず、ユニット間でも発現している可能性を検討した。これにより、レニウム(I)錯体を環状多核化することで、創発的に発光特性が向上する可能性を見出した。 (C) 多電子の授受が可能な光増感錯体の開発 環状レニウム(I)多核錯体は、可視光を吸収することで長寿命の3重項MLCT励起状態となる。この励起状態が、トリエタノールアミンのような還元剤と反応することで1電子が多核金属錯体の一つのユニットへ導入される。この光電子移動反応を繰り返すことで、環状レニウム(I)錯体は、その核数の数まで電子を蓄えることのできる電子プールとして働く可能性がある。合成した種々の環状錯体を還元剤共存下光照射したときの紫外可視吸収スペクトルを追跡することで、多電子プールとしての機能があることを明らかにした。電子プールとして適した構造を有する環状錯体を光触媒として用いて、二酸化炭素の還元が可能であることを見出した。
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